反脆弱性

タイトル
「ブラック・スワン」「まぐれ」などで知られる
ナシーム・ニコラス・タレブによる著書のタイトルです。
「反脆弱性」とは「Antifragile」という造語の訳語で
「脆くない」という意味ですね。
不確実性を生き延び
利益を得るための哲学書
といったところでしょうか。
僕は彼の本が大好きです。
ぜひ皆さんにも読んでもらいたい。
「反脆弱性」は
その中でも最高傑作と呼ばれている本です。
軽くレビューでも
してみようと思います。
キーワード3つ
本の中には3つの重要なキーワードが出てきます。
・変化やアクシデントに対応できない「脆弱」
・ヒストリカルデータ(=過去の出来事)上に存在する
それらには対応できる「頑健」
・かつてないようなそれらをきっかけに強化され
危機を生かせる「反脆弱」
です。
もうちょい解説してみます。
脆弱(✖)
これは変動に弱いってことですね。
トレーダーのタイプでいえば
…トレードできない人…です。(笑)
損が怖くて手が出ない人。
リスクを必要以上に嫌うので投資はしませんが
しょうもない保険商品の類にプレミアムをいっぱい払って
結局損ばかりしているような人を指します。
頑健(△)
リスク測定をがっつりし
それを基に意思決定をする人・モノ・システムを指します。
強そう。(笑)
ただし
「反脆弱」ではありません。
なぜなら
ここでいうリスク測定は
ヒストリカルデータ(=過去の出来事)を基に
行うものであり
リスク要因が
データ上に存在しないようなものだった場合
リスク測定やその後の戦略にこれが盛り込まれません。
そして
こうした極めて低確率のリスクが具現化したとき
得てしてその被害は甚大なものになります。
ちなみに
こういった
とても発生確率は低いけど
とても被害が大きい事象のことを
「ブラック・スワン」と呼びます。
余談ですが
アフラックのCMには黒い白鳥が出てきますね。
あれは
「ブラック・スワン的なイベントに備えて保険に入ろうね」という
メッセージを込めたマスコットキャラクターなんですよ。
話は戻って。
この頑健ですが
トレーダーのタイプでいえば
バックテストにおける最大ドローダウンを
ものすごく気にする人。
そしてその最大ドローダウンを基に
パッツパツの資金管理をする人がこれにあたります。
大抵このようなトレーダーは短命に終わります。
考えてみれば
最大ドローダウンがマークされる時
というのは常に
その時点までにはなかったレベルの
損失が出たときです。
なのに
最大ドローダウンを拠り所にしながら
これが更新される可能性について考えないのは
大きな矛盾といえますね。
どんなに過去データがたくさんあったところで
リスクを事前に知ることは不可能なのです。
反脆弱(◎)
脆弱の反対かつ頑健よりも好ましい状態です。
この状態を目指したいところですね。
「ブラック・スワン」を生き延び
これを糧に自身が強化される
人・モノ・システムを指します。
トレーダーのタイプでいえば…
うーん難しい。
後で言います。(笑)
反脆弱性を養うために
この点に関して書籍の中でとても印象的だった文章が2つほどあります。
脆さは測れるが、リスクは測れない
先ほどのドローダウンの例に当てはめるのであれば
ドローダウンが再度更新される確率や
それが何をきっかけにして起こるのかについて事前に知ることは
極めて難しい。
でも
実際にそれが起きた場合の損失を見積もることは
もう少し簡単である。
ということになるかな、と。
例えばゼロカット口座で運用しておけば
基本的には証拠金以外のお金は無事でしょう。
ブラック・スワンの発生確率をいつもろうという試みはムダです。
むしろ
ブラック・スワンは起こるものとして
損失額から逆算したプランニングをすることは
非常に大切ですね。
ランダムな事象(や一定の衝撃)によるダウンサイド(潜在的損失)よりもアップサイド(潜在的利得)のほうが大きいものは反脆い。
見落としがちですが
ブラック・スワンによって利益を
得ることもありうるということ。
大抵うまくいかないけど
当たったら莫大な利益って感じです。
そして
ブラック・スワンが起きたときの
リスク・リワード比率(利益/損失)が
1.0を超えているってことなんだけど…。
変動幅が損益になる通常の為替トレードにおいて
これを実現するのは難しいですね。
そもそも
ブラックスワン時の値動きってどんなもんよ…。
分かんないでしょ。(笑)
せいぜい先述のゼロカット口座で損失限定するくらいしか。
でも
オプションをはじめとしたデリバティブ取引なんかを
組み合わせて取引すると結構実現しやすいですね。
映画「マネーショート」の登場人物が
サブプライム・ショックで利益を上げたのも
こうしたデリバティブ取引によるものでした。
このブログのメインからはズレるけど
オプション取引についてもそのうち書きますね。
(注:バイナリーオプションじゃないぞ)
現状のボク
正直なところ僕の為替トレードは
頑健から反脆弱に寄せるように努力してるって感じです。
なぜなら
アルゴリズムによるトレードで
柔軟さを追求するのは難しいし
やはり検証は大切。
ヒストリカルデータを
拠り所にしないわけにはいかないので。
一方で
頑健の持つ硬直性をなるべくケアする工夫はしています。
フィッティングの度合いを敢えて緩めにしたり
とか
バックテストにおける取引の順序を
ランダムに並べ替えテストしてみたり
(モンテカルロシミュレーションといいます)
とか
あとは何といっても
余裕資金による低レバレッジ。
要は生き残らないと強化もクソもないわけです。
「リスクは測れる」の幻想のもとに
パッツパツのトレードをやってると
間違ったときに立ち直れません。
トレードシステムは
緻密に作りすぎてはいけないのですね。
誤解を恐れずに言えば
アソビが大事なんです。
エクスキューズ
この「反脆弱性」という本。
実際に読んでみると
ビジネスや政治・行政システム、災害対応、恋愛に至るまで
幅広い分野に応用できる話として書かれた本です。
言ってみれば
「生き方」や「社会の在り方」について書いた本ですね。
そんな本を今回
僕なりにトレードの話として落とし込む過程で
多分に私見が入っていますので正確性に欠けてたらスミマセン。
ぜひ皆さんも一読して
皆さんなりの「反脆弱性」論を聞かせてくれたらうれしいです。
では。
-
前の記事
無職はつらいよ
-
次の記事
2019年4月トレード成績