「敗者のゲーム」卓越したトレードスキルは要らない。大事なのは○○をしないこと

どうも、メタトレ研究所のHiroです。
今日は久しぶりに、書評をお送りしようと思います。最近読んだ本です。
友人から、
「この本読んでみて、出来れば書評の動画を上げてほしい」
ということで、半ば宿題のような形で読んで上げる動画になります。
その本がどういった本だったかというと、こういった本です。
『敗者のゲーム』
という本ですね。
読んだこと、無かったんですよね。凄いメジャーな本だからです。全世界100万部以上のセールスを誇る、インデックス運用のバイブルとされている本です。
インデックス運用といえば、もう一番有名な本は、バートン・マルキールが書いた
『ウォール街のランダム・ウォーカー』
という本がありますけれども、まあ、あれと双璧を成すような、かなりメジャーで人気の書籍になります。
僕があまりインデックス運用というものに入れ込んでいないというので、たまたま読んでいなかったんですけれども、投資・投機・金融…こういったものに日頃携わっている人というのは、結構な割合でこの本を手に取ったことがあるのではないかと思っています。
読んでみて思ったのが、『敗者のゲーム』の方がちょっと読みやすい本だったな、という風に思います。
多分、ページ数もかなり圧縮されているというか、ボリューミーなものではないですし、言い回し・書き回しというのもいくらか読みやすい本だったような気がしています。
『敗者のゲーム』
書いた人が「チャールズ・エリス」という人です。
全米の公認証券アナリスト協会の会長なども務めたことのある、本当に「投資界の重鎮」と呼ばれる人です。
興味深いのが…、皆さんも思っていると思うんですが、『敗者のゲーム』というこのタイトルですよね。この言葉の意味、イメージ出来ますか?
僕は、読んだ時に、あまりこうイメージが湧かなかったんですけど、彼はこの『敗者のゲーム』という言葉の意味を、テニスになぞらえて説明をしています。
…テニスのルールって、皆さんご存知ですかね?
「得点がどういう風に重なっていくか」ということなんですけど、最初の得点が15点ですよね、次が30点、次が40点。不思議な得点の積み重ね方をするんですよね。
15→30→40。「…え?」っていう。
「何で45じゃないの?」って、子どもの時から思ったりしていたんですけど。
こういった、15→30→40っていう風に積み重なっていくこの得点そのものではなくて、「どういった得点がどのように実現されたのか」。「得点の裏に隠された数値」です。
一般に言えることなんですが、最近のスポーツ中継はデータ分析の流れが凄く進んでいまして、テニスの中継に関しても、得点だけではなくて、各プレイヤーの戦いぶりを統計データとして表示するっていうことが結構、中継中にあります。
プレイヤーの得失点の内訳を示すような指標というのがあります。いわゆる「ウィナー」というのと、「アンフォーストエラー」という、こういう数値があります。
強者のゲームとは?
まずウィナーというのは、相手が打ち返せないようなコースにボールを打つことによって得点することを指します。良いコースに強い球を打つとか、自分の良きプレイによって得点を挙げるというのがウィナーです。
一方でアンフォーストエラーというのは、「アンフォースト」…要は誰からも強いられていないにも関わらずエラーを犯した、ということですね。
まあ言い方は悪いですけれど「凡ミス」っていうようなイメージになるかな、と思います。
ダブルフォルトとか、アウトしちゃうとか、ネットに掛けちゃうとか…そういったことによる自滅による点、これがアンフォーストエラーといいます。
このウィナーとアンフォーストエラーという数値を見てみると…っていうのを、このチャールズ・エリスさんという人が言っているんですが、このテニスプレイヤー、この戦っているプレイヤー同士のレベル、技術レベルが上がれば上がるほどに、アンフォーストエラーの…要は凡ミス・自滅の数は減っていって、ウィナーが増えていきます。
従って、こういったゲームの中では、勝つために必要なのはウィナーの数だ、と。
相手がミスをしないわけですから、「いかに良きショットを相手よりも多く打つか」ということが勝負を分ける、ということになるわけですね。
すなわち、相手よりも秀でた技術とか判断力とか、そういったものによって生まれる素晴らしいショットによって、相手を出し抜く能力というのが、勝負の明暗を分けるという…そういうゲームルールになっていく、ということです。
こういったウィナーによって勝負が決まる、というようなゲームのことを、著者は「勝者のゲーム」という風に定義づけています。
この本のタイトルと逆の言葉ということですけれども。だから、それとは違うものを扱っているのがこの本の内容、ということになるんですが…。
敗者のゲームとは?
次に「敗者のゲーム」とはどういうものか、というのをテニスに置き換えてちょっと話をしてみると、プレイヤーレベルの低い人同士の試合というのは、アンフォーストエラーが増えます。ウィナーが減ります。
ゲームの勝敗を左右するのは、「素晴らしいショットの本数」ではなくて「如何にミスをしないか」という、そういったファクターになってくるわけですね。
「ミスが少ない方が勝つ」というような性質のゲームを、著者は「敗者のゲーム」という風に定義づけているわけです。
その上で、著者は…投資の話なので、今度は投資にこの話を置き換えて話をするんですが、著者はこれを例に出すことによって何が言いたかったかというと、かつては「勝者のゲーム」であったマーケット・市場が、現在は「敗者のゲーム」に変わってしまった、ということを述べています。
これを聞いて、イメージ出来る人…いますでしょうか?
説明してみると、伝統的に「資産運用の世界というのは、市場平均に勝つことが出来る」という信念が支配的だったわけですね。ところが今日では、この前提というのは、プロの投資家…いわゆる機関投資家ですね、こういった人達の間であっても当てはまらない、という風に述べています。
具体的に年間パフォーマンスなんかを見ていくと、年間成績だと、アメリカのその機関投資家・ファンドマネージャーが市場を上回っている率というのは40%しか無いそうです。
これが、期間が延びると段々と酷くなっていって、10年では3割の人しか勝てない、20年に延ばすと何と2割のファンドマネージャーしか市場平均に打ち勝つことが出来ない…っていう風に、そういうデータが出ているそうです。
なぜこんなことになったのかというと、「機関投資家のシェアが大きくなった」っていう点が凄く大きいようです。
よく言う「アクティブ運用の難しさ」っていうのが…「タイミングを上手く測らなくてはならない」とか「手数料がかさんでしまう」とか、そういった点はもちろんチャールズ・エリスさんも述べているんですけれども、「市場よりも優れた運用をすることによって、成果を上げる」
これが「市場平均を上回る」ということなんですけれども、現在は、その「市場」自体が「機関投資家」とほぼほぼイコールになってしまっている、という状況がある、ということらしいんですよね。
「市場よりも高い成果を上げようと努力する機関投資家の数」が多くなる・多数現れることによって…シェアを大きくすることによって、彼ら(機関投資家)自身が市場になってしまった、という状況がある。
その状況の中で「市場に勝とう」と思う、ということは、これは「自分(機関投資家)自身に勝つ」みたいな話になってしまうんだ、ということみたいなんですよね。
なので、何ていう言い方をしたら良いんでしょうね…「市場が自己崩壊」というか、「市場が自己矛盾してしまった」というような状況がある、という…そんな感じなんだと思います。
そんなこんなで、市場に打ち勝つことが難しくなってしまった、市場に打ち勝つのではなくて周りのファンドマネージャー同士で勝たなきゃいけない、という状況になるんですけど、そのために必要な素養というのが、かつては
「人よりも良いトレードをする」
「市場参加者の大多数よりも良いトレードをする」
ということだったんだけれども、「人よりも秀でたトレードをする」のではなくて、
「如何にミスを少なくするか・無用なコストを減らしていくか」
というところがパフォーマンスの良し悪しを分ける、
いわゆる、これが「敗者のゲーム」になっているんだ、という話になっているわけですね。
そういった「ミスを防ぐ」、「余計なコストを掛けないようにする」、買うタイミングを間違えるとか売るタイミングを間違えるとかの「余計な損失を出さないようにする」とか、「利益を生まないトレードに手数料を掛けるというのは凄く無駄なわけです。
ですから、そういったものを極力排するために、彼は「どういう投資手法を取れ」と言っているかというと、「インデックス投資」なんだ、ということを言っています。
インデックス投資について
「インデックス投資」って…分かりますかね?
「インデックス運用」と「アクティブ運用」という2つの投資スタンスがあります。
アクティブ運用というのが、銘柄を積極的に選ぶ…「銘柄、これが上がるかな」「この通貨ペアが上がるかな・下がるかな」というので、利益が出やすそうな銘柄を選ぶとか、あとは時期を選ぶ、ということもありますね。
「今買うべきだろうか」「今売るべきだろうか」、能動的に戦略を練ってトレード・運用・投資をしていく、というのがアクティブ運用です。
一方で、インデックス運用…これは、「積極的に銘柄を選ぶ」ということをしません。ではどういう風に買うものを決めるかというと、「全部買います」という選択をします。
日経平均であれば「日経平均指数を出す225銘柄の株を全部買う」ということをしますし、ダウ・ジョーンズの30銘柄であれば「30銘柄全部を買う」ということをします。
「インデックスを形成している銘柄を全て買う」ということをします。
基本的には、大多数の、このインデックス運用をする人というのは、買う時期・売る時期ということもそんなに積極的に考えたりはしません。買って買いっぱなし。
時期を分散するとか、するとしても「売って買って、売って買って」ということをするのではなくて、例えば「毎月毎月買っていく」とか「毎年毎年買っていく」とかっていうような感じで、投資家・トレーダー・運用者自身の意思が反映されない形での機会の分散のされ方がなされていたりします。
まあ、「パッシブ運用」という風なカテゴリーにカテゴライズされることが多いんですけれども、まあそんな感じになっていますよ、と。
その2つがある中で、チャールズ・エリスさんはこの本の中で、
「敗者のゲームの中で負けないようにする・ミスを減らして増やすようにするためには、パッシブ運用を採るべきだ」
という話をしているんですね。
「インデックス運用というのを上手くいかせるためにはこういう風にしたら良いよ」という、べき論・ノウハウに関してもこの本の中に載っていて、ちょっとそれ全部をこれから説明していると動画がめちゃくちゃ長いものになっちゃうので割愛しますけれども、今の話を聞いて「良いかも」と思った人は、是非読んでみてください。
僕自身はあまりこれまでインデックス運用というのをやってこなかった人間なんですけれども、凄く興味深い内容になっていました。
そして、中にはアクティブ運用にも共通で用いることが出来る考え方だよね、というようなことがあったりもしますね。
「しっかりと投資戦略をを策定して、その通りに運用しましょうね」
とか、
「感情というものを排して、どうトレードするかが大事です」
…アクティブ運用が上手くいかない人の原因というのは、感情というものが入ってしまうからなんですよね。
その感情というものをコントロールしようとしても、なかなか難しいわけじゃないですか? 結局そのコントロールが上手くいかなくて、運用が出来なくなってしまう。
で、先ほど言った投資基本政策というものも、作るは作るんだけど、結局その通りに出来ないから意味無いよね…みたいな状況が生まれたりするわけですよね。
それらが大事なので、インデックス運用を…こういったことが大事だから、それを実現するために適しているのがインデックス運用だったりするわけですよね。
だって、人間の裁量が入り込む余地が極端に少なくなるわけですから、裁量の入る余地が少なくなるっていうことは感情が入り込む余地もそれに伴って少なくなっていくわけですよね。
いわゆるアクティブ運用の中で「敵になり得る事象」というものがあります、ファクターというものがあります。
「それらを排するのに凄く適しているのがインデックス運用なんだよ」という点も1つあるのではないかな、と…今のはちょっと僕の考えですけれど、そういうのも考えたりしています。
で、1つ、読者の方には気を付けていただきたいと思うんですが、
「じゃあトレード自分でやるのって結構望み無くね?」
って思った人結構多いと思うんですよね。
「絶望的じゃない? アクティブ運用、無理じゃない?」
っていう風に思った方、凄く多いかなと思うんですけど、
あくまでこのアクティブ運用っていう塊と市場平均っていう塊を、それぞれ塊として比較した時に、「その統計的な優位性はどっちにあるの?」っていう話をした時に、「市場平均の方が上回っているよね」って話をしているのに過ぎないので。
これイコール「アクティブ運用で勝てる人はいない」っていう話ではないんですよね。
だから、そこだけはちょっと押さえておいてもらいたいな、と思います。
…ちょっと、ごめんなさい、FXがここで言う「アクティブ運用」に当てはまるのか、っていう議論もあるかとは思うんですが、まあどちらかと言うとアクティブですよね。
そういった運用で長く生き残り、生計を立てている人というのが実際に何人かいたりするわけですよね。
「それが大多数」とは言わない、やっぱり少数なんだと思うんですが、「そういう可能性が無い」っていう風に思うのは間違いなんじゃないかな、と思っています。
何でこういう話をしたかというと、結構僕の動画も、期待値とか統計の話とかをすることが多くて、そういった統計的なデータを見た結果、「こっちの方が優位性が高くて、こっちの方が優位性が低い」とか、「こっちが期待値が正で、カウンターパーティーに行ったら、こっちの方が期待値はマイナスである」というような話をしたりするんですね。
直近だと保険の動画とかちょっと上げたりしたんですよね。
「保険会社の方が期待値がプラスで、加入者はマイナスですよ」という話をしたんですが、「統計の話」と、「ユーザー1人1人の話」というのを上手く区別して理解することが出来なかった人が、
「“保険に入る人が全員損をする”というのは間違いです」
みたいなコメントをしてきたりして、「いや、そもそもお前の理解が間違ってるわ」っていう、「そういう説明はしていないからね」っていうことがあったりしたので、恐らくこの本を読んだ人も、そういった知的レベルの人がもしいた時に、
「え? じゃあアクティブ運用で勝てる人って1人もいないってこと?」
みたいな話になっちゃうといけないな…と思ったので、一応こういう話をさせてもらいました。
はい、そんな感じで、まあ僕自身はあまりインデックス派ではない・パッシブ派ではないです。「今後絶対やらないか」と言われるとそうでもないですけれども、今どっちに軸足を置いているかというとアクティブの方なんですよね。
ですが、どちらの立場をとるにしても、バランス感覚って凄く大事だと思うんですよね。
今はそんなに資金が大きくないのでアクティブで一生懸命運用していますけれども、これが、予定通り大きく増えていった時に、「いろんな選択肢を考える」ってフェーズが出て来ると思います。
そういった時に、今の段階から積み重ねていった知識とか、考え方というのが、ちゃんと頭の中に入っていると、その分だけ本当の意味での選択肢というのが増えていくわけですよね。
そんなことがあるので、僕はいつも、バランス感覚を持って、自分とは違う立場の人の書いている本とか言っていることというのも積極的に取り入れようという風に考えています。
その一環として、今回は友人から勧められたっていうこともあって、『敗者のゲーム』というインデックス運用を勧める本というのを読んでみました。
ちょっとノウハウのところまでしっかりと触れることが出来なかったんですが、これをきっかけに興味を持って、その内容についてしっかりと読み進める…みたいな感じの人が出て来ると凄く嬉しいな、と思います。
まとめ
はい、そんな感じで、今回の動画は以上になりますけれども、内容が少しでも勉強になった・役に立ったと思っていただけた方は、チャンネル登録と高評価、ぜひよろしくお願いします。
それから、今日、「こういう運用をしているんだ・本に書いてあるような運用はしていないんだ」というような話をしましたけれども、実際に普段どういった運用をしているのか、というのをTwitterでシェアしています。
運用の内容というよりは、そのままポジションのシェアです。
「今買いました」「今売りました」とか「今売りました」「買い戻しました」みたいなポジションの共有をやっていますので、興味のある方は是非フォローまでしておいてください。
はい、以上になります。それでは皆さん、ごきげんよう。
-
前の記事
【初心者向け】円安円高の仕組み どう変わるの?
-
次の記事
プロトレーダーのトレード環境を紹介します