【書評】ニコラス・タレブ「反脆弱性」 どんな市場でも生き残ることが出来るトレーダーとは?

どうも、メタトレ研究所のHiroです。
今回は、書評の回ということで、僕が今まで読んだ本の中から1冊セレクトして紹介したいと思います。
今回扱うタイトルがこちらです、『反脆弱性』という本ですね。こちらはナシーム・ニコラス・タレブという、レバノンの人が書いた本です。
このナシーム・ニコラス・タレブという人は、レバノンで生まれて、その後、世界中の金融機関でトレーダーとして活躍した人です。
専門はデリバティブ。このデリバティブの学者でもあります。学者であり、この本を書いている随筆家であり…本を読んでいると、この人は哲学者っぽいところもあったりするわけです。
とにかくいろんな顔を持っているわけですが、そのどの分野でも超一流のスーパースターなわけですね。
このナシーム・ニコラス・タレブという人は、これまでに『ブラックスワン』とか『まぐれ』とか…これ、どっちも読んだんですけど、この両方の本でベストセラーを飛ばして、物凄い人気の作家なんですけれども、その中でもこの『反脆弱性』っていうのは、それに続いて出された本なんですが、「最終章」「最高傑作」と呼ばれている本です。
この『反脆弱性』っていう言葉、今までに日本語として使う機会がなかなか無かったと思うんですが、これは、「Antifragile」っていう、このタレブが作った造語を訳した言葉です。
「fragile」っていう言葉が元々あって、これが「脆い」という意味なんですが、これに「ANTI」っていう…「アンチ」って言いますよね、日本語でも。その「逆」っていう意味を持つ接頭語を付けることによって付けられた「Antifragile」、これを訳すと「反脆弱」という意味になるみたいです。
それが和訳版の本のタイトルになっているわけですが、要するに「脆くない」という意味ですね。
「脆くない状態」を作ることによって、不確実なこの世界をどのように生き抜くのか。
トレードもそうですよね。トレードも、不確実が支配する世界です。で、生き残って利益を出すっていうことを目指すわけですけれども。
トレードに限らず、いろんなところにそういうことってあるわけです。
そういう、色々な…災害とか、事件とか、あるいは会社が破綻したりとか…いろんな不確実な事象っていうのは起こるんだけど、そういったものを経験しながらもどうやって生き延びていくのか、っていうことを述べているのがこの本です。
この本を読む上で、まず押さえておきたい言葉
この本を読む上で、まず押さえておきたい言葉が3つあります。
1つが「脆弱」という言葉です。「反脆弱」の逆ですね。
「脆弱」っていうのはどういうことかというと、変化とか、アクシデントに対応出来ないような状態、これは「脆弱」と呼ばれています。
2つ目が「頑健」という言葉です。頑丈の「頑」に健康の「健」。いかにも強そうな字の並び方ですけど、これが「頑健」という言葉ですね。
例えば、ヒストリカルデータ上に存在するようないろんな出来事・イベント・事件・リスクをちゃんと分析して、それに合わせた行動をとる・意識決定が出来る状態、対応出来る状態…っていうのが「頑健」という言葉ですね。
3つ目が「反脆弱」という言葉です。
「反脆弱」っていうのは、今までに起きた物事に加えて、今までに起きなかったレベルの物事っていうのもあるわけですね。
これまで一度も起きなかったようなことも含めて、こういったものを生き延びる力があって、更にこういった事件とか出来事とかリスクを乗り越えて、その過程において自分が更に強化されるような状態っていうのが「反脆弱」と呼ぶわけですね。
この3つの、「脆弱」「頑健」「反脆弱」っていう言葉があるわけですけれども、どれも、今説明してみて思ったんですが、結構抽象的で分かりづらいですよね。
なので、ちょっとここから先は、これら3つの概念をトレーダーに当てはめて説明してみようかなと思うんですけれども…。
具体的に説明します
例えば、「脆弱なトレーダー」ってどういう状態か、ということを話すと、「脆弱なトレーダー」というのは、「変動とかリスクに対応することが出来ないトレーダー」です。
つまり、そういったものが怖くてエントリー出来ないとか、まあ誰もが経験したことあると思うんですが、そういったトレーダーのことを指します。
あるいは、そういった…変動とか、損とか、そういったものが怖くて、そもそもトレードをすることが出来ない・始めることが出来ない人も、この「脆弱」のカテゴリーに含まれると思います。
次に「頑健」。「頑健なトレーダー」ってどういうトレーダーかというと、ヒストリカルデータを元にバックテストを物凄く一生懸命やって、最大ドローダウンをしっかりと測定出来ているトレーダーのことです。
…これだけ聞くと結構良さそうな感じがするんですが、ここには落とし穴があって。
ヒストリカルデータを元に見積もった最大ドローダウンっていうのは、絶対ではないんですね。
というのも、最大ドローダウンというものが過去においてマークされる時っていうのは、当然、そのマークされた時点までは起きなかった損失が初めて起きた…だから最大ドローダウンとしてマークされているわけですよね。
ということは、最大ドローダウンが今後、未来に渡ってトレードする中で更新される可能性は十分にあるわけです。
だから、仮にこの最大ドローダウン…過去のバックテストの中から得られた最大ドローダウンを、あまり鵜呑みにして、これにパツパツに合わせ込んだ資金管理をしてしまうと、このトレードは破産してしまう可能性が高くなってしまうわけです。
だから「頑健」っていう言葉は一見すると物凄く強そうに見えるんだけど、この運用の仕方を間違えると、物凄く大きな損を生んでしまう可能性も同時にはらんでいる、っていうことを押さえておきたいわけです。
だから、「頑健」と「反脆弱」というのは概念が別のものとして扱われているわけです。
じゃあ「反脆弱」になるにはどうしたら良いのか、って話になるんですけれども、これを知る上でヒントになるな、ってちょっと印象に残った文章が2つあるんですね。これをちょっと紹介したいなと思うんですが…。
脆さは測れるけれども、リスクは測れない
まず1つ目が、「脆さは測れるけれども、リスクは測れない」という文章です。
「脆さは測れるがリスクは測れない」…つまり、さっきのヒストリカルデータ・バックテストの例を見れば分かると思うんですが、過去のデータを幾ら集めたところで、今後どういうことが起こるかっていうのを完璧に測定するっていうのは無理なんですね。
だけど、過去に起きなかったような物事、過去に起きなかったような事件・イベント…が起きた時にどれぐらいの損失が出るかを見積もるのは、そんなに難しいことじゃないんです。
例えば、トレードに当て嵌めてこの話をすると、何か…いわゆる「何とかショック」みたいなことが起きた時に、ある通貨ペアの値幅がどれだけになるかっていうのを、今から予測することは不可能ですよね。
だけど、それが起きた時に、損失を限定するっていうのはそんなに難しくないんです。
例えば、「ゼロカット口座」ってありますよね。追証の請求が無いタイプの口座ですけれども、こういったゼロカット口座を使っておけば、どんな値動きが起きて、自分が損失を出したとしても、自分が入金した口座のお金以上の損失が出ることは無いですよね。
こうすることによって、リスクは測れないけれども、リスクが顕在化した時にどれだけの損失が出るか、事前に知ることは可能になるわけです。
ですから、ゼロカット口座を使うっていうのは、ある種、反脆弱性を備えるための有用なツールになるわけです。
これが1つ目の「脆さは測れるがリスクは測れない」ということの説明と、実際にトレードする上でどういう当て嵌めが出来るか、ということの例です。
ランダムな事象によるダウンサイドリスクよりも、アップサイドリスクの方が大きい場合は反脆弱である
2つ目が、「ランダムな事象によるダウンサイドリスクよりも、アップサイドリスクの方が大きい場合は反脆弱である」という、そういう文章です。
リスクっていう話をすると、これ、見落としがちなんですが、このリスクを元に儲かる場合もあるわけです。
人は「リスク」という言葉を聞くと損することばかり考えるんですが、このリスクが顕在化した時に、それを使って儲けるという場合もあるわけですね。
その同じリスクが原因で失敗する時よりも、成功する時の成功の方が大きいのであれば、これは良い状態だよね…っていうことをこの文章は言っています。
先ほどゼロカット口座の話をしましたけれども、ゼロカット口座を使っている場合は、有るリスクが顕在化した時…例えば、暴落っていうイベントがあった時に、当然その暴落の幅って分からないんですけど、それによって起きる損失額って、ゼロカット口座を使って限定出来ますよね。
更に、その暴落というイベントにおいて、自分が儲かるようなポジションをとっていた時には、その儲かる金額というのは無限大になるわけです。
このような状態を作っておけば、この暴落っていうイベント、これを予想出来なくて、こういったイベントに居合わせてしまったとしても、自分自身は生き残ることが出来る。
生き残った上で、このイベントを糧に、今後もトレードを続けることが出来る。
今後のトレードを続ける…今後もトレードをする時には、今起きたこの暴落っていうイベントすらも織り込んだトレードが今後出来るわけなので、自分のトレードのレベルが上がっているわけです。
このような状態が「反脆弱」なんですね。こういう「反脆弱」なトレーダーを目指す、ということがトレードをする上で凄く大事なんだよ、ということに、この本を読んでいると気付かされます。
まとめ
まあトレードをしていると、いろんな勘違いをします。
「トレード歴が2年あります。最初の1年は負けたけど、次の1年で勝つことが出来ました。もう僕は無敵です、今後負けることはないでしょう」
…みたいな。あとは、
「バックテストをしました。バックテストをして最大ドローダウンは20%でした。…ってことは5倍レバレッジを掛けることは可能だな」
とか、いろんな、もうこういう過去に起きたほんのたかだかこの数年間の過去の経験とか過去のヒストリカルデータを元に、絶対的な自信をもってトレードしちゃう人、というのがいるんですが、「それは間違いなんだよ」っていうことが、この本を読むと分かるわけですね。
だから、そうした勘違いを元に大きな損失を出す・再起不能になる、ってことを防ぐために、是非、1回この本を読んでみて貰いたいな…と思うわけです。
ということで、今回のレビューは以上になります。
今回の動画が勉強になった・役に立ったと思った方は、是非高評価・チャンネル登録をよろしくお願いします。
それから、この『半脆弱性』という本は、物凄く抽象的な概念を扱った本なので、多分、読む人によって、同じ文章を読んでも、思うこと・考えることが違ってくると思います。
ですから、是非、皆さんの読書感…読んだ後の考えたことっていうのを、僕にシェアしていただきたいと思います。
そのシェアにあたっては、コメント欄がありますので、是非そういったもので、思ったこと・考えたこと・感想をコメント欄に寄せて貰えると嬉しいです。
ということで、今回の動画は以上です。
それでは皆さん、ごきげんよう。